2022年05月10日
阪大・九大など、木材由来の電気特性ナノ半導体創出
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:大阪大学

 大阪大学産業科学研究所の古賀大尚准教授、九州大学大学院の末松昂一助教(理工学研究院)、岡山大学の仁科勇太研究教授(機能分子工学)らの研究グループはこのほど、木材由来のナノセルロースを用いて、電気特性と3D構造を幅広く制御できるナノ半導体の創出に成功したと発表した。

 環境調和型の次世代エレクトロニクスに向けて、持続可能な電子デバイスの開発が求められている。古賀准教授らの研究グループは、持続可能な生物資源、木材ナノセルロース由来の紙「ナノペーパー」を用いて、紙の電子ペーパーや生分解性ペーパーメモリといった環境調和型の電子デバイスを開発してきた。だが、ナノペーパーは電気を通さない絶縁体のため、主に基材としての利用にとどまり、電子デバイスとして動作させるためには枯渇性資源由来の半導体が不可欠だった。

 研究グループは、ナノペーパーによる紙ならではの3D構造設計技術、および段階的炭化・形態保持炭化技術を駆使し、絶縁体~準導体まで系統的な電気特性制御が可能、かつ、ナノ~マイクロ~マクロのトランススケールで3D構造制御が可能な新奇ナノ半導体を得ることに成功した。
 
 これにより、目的や用途に応じた電子機能や3D構造のカスタマイズが可能になり、全て木材由来の電子デバイスを作製することも夢ではなくなった。持続可能なグリーン・エレクトロニクスの実現に向けた道を拓く成果として期待される。同研究成果は4月27日、米国科学誌「ACS Nano」に公開された。
 
(用語の解説) 
◆ナノペーパー :ナノセルロースを用いて作られる紙。エレクトロニクス分野では、フレキシブル性や生分解性を有する電子デバイス基材として注目されている。