2022年06月09日
東大など、AIを利用し「量子指紋」の解読に成功
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京大学

 東京大学大学院 工学系研究科の大門俊介助教ら研究グループは9日、上智大学理工学部の大槻東巳教授らと共同で量子を理解するAIを開発し、電気抵抗の情報から試料のナノ微細構造を復元することに成功したと発表した。

 電気抵抗は、物質の中での電子の流れやすさを表わす。金属などの物質は物質固有の電気抵抗の値をもち、同じ大きさの金属はほぼ同じ電気抵抗を示す。だが、ナノメートル(1ミリの100万分の1)という極小の世界では、量子力学が電子の運動を支配し、この状況は一変する。電子が波のように金属中を漂い、金属の表面や障害物に散乱された多くの波が干渉し、波の度合いによって電気抵抗が大きく変化する。このような量子力学的な波の干渉は極めて複雑で、電気抵抗からミクロな情報を復元することは無理とされてきた。

 今回、大門助教らは量子力学的な干渉を解読するAIを開発し、電気抵抗の情報だけから金属内部のミクロな構造を復元することに成功した。AIが人知を超える精度でデータを認識できることに着目し、量子干渉の解読に特化したAIを開発した。開発したAIは一見ランダムに見える電気抵抗の変化に法則性を見出し、電気抵抗のデータだけから金属内部のミクロな構造、さらに量子力学的な干渉の情報を引き出すことができる。
同研究成果は、6月8日付の英国科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。

ニュースリリース
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20220606_05web_quantum.pdf