2022年06月15日
京大、腎臓造血ホルモン/EPO産出プロ集団と解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

 腎臓で造血ホルモン(エリスロポエチン:EPO)を生み出す細胞が、EPO産生に特化したプロ集団であることを15日、京都大学の柳田素子教授らの研究グループが明らかにした。副作用の少ない腎性貧血治療薬の開発に貢献する成果となる。

 慢性腎臓病は、成人の8人に1人が罹るといわれ、患者の多くが貧血(腎性貧血)を発症する。腎性貧血は、腎臓の線維芽細胞でEPOを生み出す能力が低下し、赤血球が減少するために起こる。しかし、これまではEPOを産生できなくなった細胞の観察が難しかったため、細胞の性質には不明な点が多く残されていた。

 柳田教授らは、EPO産生細胞を任意の時点で標識し、永久に追跡できる遺伝子組み換えマウスを作成し、健康な腎臓と、慢性腎臓病の腎臓におけるEPO産生細胞の振る舞いを解析した。

 その結果、健康な腎臓では、線維芽細胞のごく一部に当たるEPO産生細胞が、繰り返しEPOを産生していた。一方、慢性腎臓病の腎臓では、EPO産生細胞はEPOを産み出す能力を失い、腎機能を損なう線維化に寄与するものの、腎障害の回復とともに、その能力を取り戻すことが明らかになった。EPO産生細胞は、EPOを生み出すことに特化した、プロフェッショナルな細胞集団だったことが判明した。

 現在、腎性貧血の治療薬として、合成EPOの注射薬や、自分自身のEPOを増やす治療薬(HIF-PH阻害薬)が用いられている。しかし、いずれの場合も、血栓症や腫瘍増大などの副作用が懸念されている。
 
 柳田教授らは、「今回作成した遺伝子組み換えマウスを活用して、EPO産生細胞を回復させる方法の開発にも取り組んでいきたい」と話している。