2022年06月17日
理研「根の長さの調節に関わる物質を発見」
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

 理化学研究所 環境資源科学研究センターの金俊植研究員らはこのほど、根の長さの調節に関わる物質を発見したと発表した。

 植物には高温、乾燥、病害など、さまざまな環境ストレスに対処する仕組みがある。金研究員は植物のストレス応答を研究する中で、根の伸長の制御に関わるタンパク質(因子)を見つけた。

 「動物は動くことができるので、暑ければ日陰に入ればいいし、喉が渇いたら水辺に行けばいい。でも、植物はそれができないので辛抱強く対応して生き延び、成長する。この複雑な仕組みを解き明かしたい」というのが研究の動機となった。

 同研究員は特に根の長さが違う変異株に注目した。植物は通常、光合成や根からの吸収などによって得られるエネルギーが制限される環境では、成長とストレス応答に使うエネルギー配分は、トレードオフの関係にある。つまり、まずは生き残ることを優先し成長全般は抑えられる。だが、根など個々の組織のトレードオフがどのようになっているかはよく分かっていない。

 小胞体(細胞内にある膜状の小器官)を介して起こるストレス応答について、モデル植物のシロイヌナズナでは、三つのタンパク質(因子)がストレス応答や成長の制御に関わることが知られているが、具体的にどの因子がどう制御しているかの全貌は分かっていなかった。

 金研究員らはこれまでの研究で、特定の二つの因子を欠損させた変異株(bz1728株)では、根が伸びなくなることを発見していた。今回は、特定株の遺伝子にランダムな変異を起こしたところ、根の伸長が回復する新たな変異株を得ることができた。今後は根だけでなく葉や茎など、植物の形態の積極的な制御の可能性が開ける。効率的な食料生産にもつながると期待される。