2022年07月27日
京大、イネのいもち病への抵抗性機構を解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

 京都大学農学研究科の寺内良平教授らの研究グループはこのほど、イネのいもち病抵抗機構解明に成功したと発表した。いもち病は、いもち病菌というカビによって引き起こされ、葉や穂を枯らしてしまう最重要病害の一つ。寺内教授らは、独自に開発したゲノム解析技術「RaIDeN法」を用いて、いもち病菌が分泌するAVR-Piasタンパク質を認識して、イネの抵抗性を導くタンパク質Piasを初めて発見した。

 Piasは、一対のNLR型免疫受容体タンパク質(Pias-1とPias-2)から構成され、Pias-2タンパク質にはNLR型受容体の基本骨格(釣りの“釣針“に対応)に加えてDUF761という付加ドメイン(釣針の“疑似餌”に対応)が見つかった。
 
 イネ属の多くの系統を対象にPias-2の仲間の抵抗性タンパク質を調べると、様々な種類の付加ドメインが見られ、これらが釣針の異なる”疑似餌”となって、それぞれに対応した病原菌因子(または病原菌因子によって改変されたイネ因子)が引き寄せられて結合すると抵抗反応が引き起こされると推測される。
 
 イネの進化の過程で、病原菌因子が標的としていたイネタンパク質の一部がNLR型免疫受容体に取り込まれて付加ドメインとなり、“釣針の疑似餌”として機能するようになったと考えられる。
 
 今後は、多様な植物遺伝子資源のゲノム配列を解読し、抵抗性タンパク質の付加ドメインを調べることにより、多くの病原菌に対する“釣針の疑似餌”を用意することができるようになる。また、Pias抵抗性タンパク質の付加ドメインを設計することにより、より病害に強い作物品種の作成が可能となる。

 同研究成果は国際学術誌「Proceeding of National Academy of Science, USA(PNAS)」(6月30日)にオンライン掲載された。

<用語の解説>
◆ RaIDeN 法とは :特定の病原菌に対して抵抗性示す品種と感受性を示す品種を交配し、F2 世代以降の子孫において抵抗性と感受性の分離を観察する。抵抗性の親品種と抵抗性の子孫複数個体の全ゲノム解読を行いこれらの個体が共通にもっている遺伝子配列の中から、タンパク質予想により耐病性に関係する遺伝子を選ぶことにより、迅速に抵抗性遺伝子を発見するバイオインフォーマティクス技術。


ニュースリリース
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2022-07/220722_terauchi-3f55ef912c30c0acc42421e27ef1386c.pdf