2022年10月26日
理研、「心臓の異常を光で診断」蛍光プローブ開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

 理化学研究所 生命機能科学研究センターナノバイオプロープ研究チームの神隆チームリーダーらの研究グループはこのほど、心筋における脂肪酸代謝を光で可視化するための近赤外蛍光プローブの開発に成功したと発表した。

 本研究成果は、心筋の異常を、放射線を使わず、非侵襲的にイメージングする手法として、今後心臓疾患の研究に貢献すると期待される。

 脂肪酸は心筋のエネルギー源で、その代謝状況は心臓の状態を反映する。従来、医療現場では、心臓の診断に放射性プローブ、123 I-BMIPPによる心筋脂肪酸代謝のシンチグラフィーが用いられている。

 今回、研究グループは、体を透過する近赤外蛍光を用いた心筋脂肪酸代謝の生体蛍光イメージングを実現するため、BMIPP の放射性ヨウ素の代わりに、近赤外蛍光色素 Alexa680で修飾した近赤外蛍光プローブとして「Alexa680-BMPP」を開発した。この化合物が発する近赤外蛍光の観測で、ヒト心筋培養細胞およびマウス個体の心筋で脂肪酸代謝が可視化できることを確認した。
同研究成果は、科学雑誌「Analyst」の表紙に採用され、10月7日に掲載された。

◆Alexa680 :
 シアニン系の蛍光色素。従来の蛍光色素よりも強い蛍光強度を示し,光安定性にも優れている。青から赤までの色調の種類があり,マルチカラー検出にも適する。核酸や抗体、タンパク質などの蛍光ラベルに汎用される。Alexa680 の色素は、吸収極大を680nm 付近に持ち、700nm 以上の近赤外領域で蛍光発光する。
 
ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/221021_pr5.pdf