2022年11月18日
極地研、南極ドー氷床流動計測法 世界初開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 国立極地研究所の猿谷友孝特任研究員らの研究グループはこのほど、北海道大学、北見工業大学と共同で、南極ドームふじ基地で掘削された深層アイスコアに含まれる氷の結晶の主軸方位分布を高精度で計測し、気候変動に伴った変化や含有不純物との関係性を明らかにしたと発表した。

 アイスコアの結晶主軸方位分布の解析はこれまでも行われてきたが、測定方法の制約から細かい変動の検出は困難だった。研究グループは新たな手法として「誘電異方性計測法」を世界で初めて開発し、これまでに類を見ない高水準の結晶主軸方位分布データを取得した。

 氷の結晶の軸の方位は、氷床の浅い部分のアイスコアではばらつきが大きい。深くなるほどばらつきは小さく、鉛直方向に揃っていくことが知られている。今回研究では、高分解能での計測が可能な「誘電異方性計測法」を用いることにより、結晶主軸方位分布の深さ方向の変化は直線的ではなく、ばらつきが大きくなったり小さくなったりという“ゆらぎ”を繰り返しながら変化していることを明らかにした。
 
 さらに、深い部分のアイスコアほど「ゆらぎ」が大きいことや、今からおよそ 13 万年前や 24 万年前の間氷期から氷期へ移り変わる時期に、結晶の方位のばらつきが大きくなること、また、アイスコアの中に含まれる塩化物イオンの濃度や固体微粒子の数もばらつきの変化に関与していることが分かった。

 結晶主軸方位分布は、南極氷床の流動のしやすさに直接影響する。今回の成果は、将来の海面上昇予測に不可欠な、今後の氷床流動の予測に重要な知見といえる。