2022年12月22日
東大、光でワイル半金属の磁化とカイラリティを反転
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京大学

 東京大学 低温科学研究センターの島野亮教授らの研究グループは21日、トポロジカル物質の一種である磁性ワイル半金属中の電子が持つカイラリティと磁化を光によって反転させることに成功したと発表した。JST戦略的創造研究推進事業の一環。

 ワイル半金属の中の電子は、あたかも質量ゼロの粒子であるワイル粒子のように振る舞い、右巻き・左巻きで特徴付けられるカイラリティと呼ばれる自由度を持っている。なかでも磁性を示すワイル半金属の中の電子は、外部から磁場を加えなくても内部に生じる擬似的な磁場を感じ、巨大な異常ホール効果を示す。
 
 この異常ホール効果によってもたらされる電流は、エネルギー散逸のない電流であることから、低消費電力で動作する次世代量子デバイスなど、様々な応用展開が期待されている。

 今回発見した光による磁化・カイラリティの反転現象は、この異常ホール効果の符号の反転ももたらす。磁化の反転のために外から磁石などで外部磁場を加える必要がなく、光のみで強磁性ワイル半金属の磁化とカイラリティを制御することが可能になるため、ワイル半金属の性質を光で制御する新たな手法として注目される。
 同研究成果は12月20日、英国オンライン科学誌「Communications Physics」で公開された。

<用語の解説>

◆トポロジカル物質 : 物質中の電子状態が非自明な幾何学的特徴(トポロジー)を持つ物質群。

◆ワイル半金属 : 電子の運動量に対する状態を記述するバンド構造において、運動量の三次元方向に線形のエネルギー分散を示し、バンドの交差点(ワイル点)が対となって現れるトポロジカル物質の一種。

◆カイラリティ : 物質中に現れるワイル粒子を特徴づける二値の量子数。例えば、スピンと運動量の相対関係を表し、平行の場合を右巻き、反平行の場合を左巻きと呼ぶ。

(発表の詳細)
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20221221_01web_weyl.pd