2023年01月13日
理研、体づくりの左右非対称性を決める「力」発見
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 理化学研究所 生命機能科学研究センターの濱田博司チームリーダーらの研究グループは12日、哺乳類の発生過程の初期に体の左右の違いを決定するシグナルが、「機械的な力」によって制御されていることを明らかにしたと発表した。

 これまで体の左右対称性が破られる仕組みについては、20年以上にわたり論争が続けられてきた。今回の研究成果は生物物理学的視点からそのメカニズムを解明した、教科書を書き換える画期的なものといえる。

 ヒトやマウスの内臓は、心臓が体の左側にあるなど非対称に配置されている。この左右の非対称性は、胎児(胚)が成長する初期の段階で、胚の腹側にある「ノード」と呼ばれるくぼみにおいて「左側を決めるシグナル」が活性化されることにより決定されるが、そのメカニズムは未解明のままだった。

 今回、研究グループは、マウス胚において、光ピンセットや超解像顕微鏡など独自の先進的な光学顕微鏡を用い、物理的解析を行うことで、この問題の解明に挑んだ。

 その結果、(1)ノードで生じる左向きの体液の流れ(ノード流)により、ノードの左側の不動繊毛は腹側に曲げられ、右側の不動繊毛は背側に曲げられる、(2)不動繊毛は腹側への曲げのみに反応する「曲げられる向きを感知できるアンテナ」であることから、ノードの左側のみで左側を決めるシグナルが活性化する、つまり不動繊毛がノード流の力を感知して活性化されることを明らかにした。
同研究の成果は、科学雑誌「Science」オンライン版(1月6日付)に掲載された。

<用語の解説>
◆ ノード :哺乳類において、左右非対称性を決定する機能を持つことが知られている胚の部位。「左側を決めるシグナル」を活性化することにより、左右非対称性を決定する。マウスの場合は受精後7.5日目に、胚の腹側に一過的に生じる。

ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20230112_03web_leftright.pdf