2023年01月30日
京大、麻疹ウイルスが脳炎を引き起こす仕組み解明
【カテゴリー】:行政/団体
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 麻疹(はしか)ウイルスは感染力の強い病原体で、発熱と発疹を特徴とする麻疹を引き起こす。WHOによると2021年には世界で900万人が麻疹に罹患し、12万8000人が死亡している。
 
 麻疹ウイルスは本来、免疫系の細胞や脳で上皮系の細胞に感染するウイルスで、脳で感染、増殖する能力は持っていない。このため、麻疹ウイルスがどのように脳炎を発症させるのかは不明で、そのメカニズム解明が待たれていた。

 今回、麻疹ウイルスが神経での増殖能を獲得して脳炎を引き起こす新たな進化の仕組みを解明した。

 京都大学の橋口隆生 医生物学研究所教授、九州大学の白銀勇太助教らの研究グループは共同で、脳炎に由来する麻疹ウイルスの膜融合(F)遺伝子の解析を行った結果、変異Fタンパク質と正常Fタンパク質の相互作用(協力または干渉)がウイルスの神経増殖能を決める重要なファクターであることをつきとめ、新たなウイルス進化メカニズムを明らかにした。

 今回の発見はFタンパク質の相互作用を標的としたSSPE治療薬の開発や、細胞への侵入に膜融合タンパク質を用いるウイルス(新型コロナウイルス、ヘルペスウイルスなど)に共通する進化メカニズムの解明に役立つと期待される。
 同研究成果は、2023年1月28日に、オンライン科学雑誌「Science Advances」に掲載された。

(発表の詳細)
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2023-01/2301_hashiguchi-40f1368359db66db1331d7a6a843ba0f.pdf