2023年04月07日
九大、メタンをメタノールに高効率変換、触媒開発
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 九州大学工学部の吉澤 一成 教授( 先導物質科学研究所 )らと筑波大学の研究グループは6日、メタンを酸化してメタノールを得るための新しい触媒(鉄錯体)を開発したと発表した。この錯体には、メタンを内部に捕捉することで効率よくメタンを酸化すると同時に、生成したメタノールの過剰酸化を防ぐ機能がある。これを用いて、水溶液中でのメタンからメタノールへの直接変換に成功した。

 メタンを酸化してメタノールを得る研究はこれまでも数多く行われてきた。だが、メタンは最も酸化が困難な炭化水素のため、温和な条件下で、メタンをメタノールへ効率的かつ選択的に変換する手法は、まだ開発されていない。

 研究グループは今回、自然界に存在するメタンを酸化する金属酵素の構造と反応機構から着想を得て、活性点近傍に疎水性環境を有する鉄錯体を開発した。これを触媒に用いたところ、安価で安全な酸化剤を利用した、メタンからメタノールへの高効率かつ高選択的な直接変換に成功した。

 この反応では、水溶液中において50 ℃、約10気圧という温和な条件下でメタンの酸化が進行する。触媒回転数は3時間で500回を超え、83%という高い選択性でメタノールを得ることができた。
 
 今後は石油などの天然炭素資源の有効利用だけでなく、水圏環境の浄化を含めた環境問題の解決に向けた有効な方法論の確立を目指していく方針だ。

ニュースリリース
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/52268/23_0406_01.pdf