2023年04月18日
北大、睡眠不足が腸内細菌叢を乱すメカニズム解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院 先端生命科学研究院の中村公則教授らの研究グループは、腸管自然免疫の作用因子である抗菌ペプチドαディフェンシンが睡眠時間の短い人ほど低く、そのことが睡眠不足における腸内細菌叢の破綻と免疫系の機能に重要な菌代謝産物である酢酸や酪酸など短鎖脂肪酸の低下に関与することを初めて明らかにしたと発表した。

 睡眠不足とαディフェンシンによる腸内細菌叢の制御に焦点を当てることで、睡眠時間と腸内細菌叢さらには菌代謝産物とのこれまで全く知られていなかったメカニズムを明らかにした画期的な成果としている。

 睡眠はあらゆる生理機能の調節に重要で、睡眠不足によって腸内細菌叢の破綻(dysbiosis)が生じ、それが精神的及び身体的不調を起こして様々な疾患リスクの亢進に関与することがこれまでに示唆されていましたが、睡眠不足がdysbiosisを誘導するメカニズムは分かっていなかった。
 
 中村教授らの研究は、これまで不明だった短眠に伴って腸内細菌叢が破綻するメカニズムとしてαディフェンシンの関与を初めて示した。睡眠不足は腸のαディフェンシン分泌低下と腸内細菌叢の組成及び機能の異常に関与することを明らかにし、脳腸相関から睡眠の新たな重要な視点を拓いた。

 今後、この脳腸相関のメカニズムをターゲットとした睡眠障害に対する新規治療法の研究開発が進み、睡眠不足に伴う様々な疾患の克服から国民の健康寿命延伸に貢献することが期待される。

同研究成果は23年3月21日公開の国際学術専門誌「 Gut Microbes 」にオンライン掲載された。

(詳細)
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/230412_pr2.pdf