2023年04月19日
東大、計算化学に基づく超高活性アンモニア触媒開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東京大学

 東京大学工学系研究科の西林仁昭教授、九州大学先導物質化学研究所の吉澤一成教授ら研究グループは18日、計算化学に基づいて分子設計された超高活性アンモニア生成触媒の開発に成功したと発表した。窒素ガスと水からのアンモニア合成反応触媒活性の世界最高記録を大幅に更新した。

 新しく開発に成功したモリブデン錯体を触媒として用いることで、反応に用いた触媒当たりのアンモニア生成量で約15倍(触媒当たり60,000当量のアンモニアが生成)を達成し、単位時間当たりのアンモニア生成速度で約7倍(1分間で触媒当たり800当量のアンモニアが生成する触媒活性)に向上させることに成功した。

 最初に、触媒的アンモニア生成反応の反応機構を詳細に検討することで触媒反応の律速段階を特定した。この実験結果を踏まえて、触媒反応の反応速度を飛躍的に向上させることが期待できるモリブデン錯体の分子設計を計算化学に基づいて行った。
 
 この計算化学による分子設計を踏まえて、予測された新規なモリブデン錯体の合成を実際に行った。設計・合成された新規なモリブデン錯体を用いた触媒的アンモニア生成反応を行ったところ、予測通りに従来の触媒活性を大幅に向上する結果を得た。

 本研究成果は、化石燃料を原料として用いた工業的なアンモニア合成法であるハーバー・ボッシュ法に代わる二酸化炭素を排出しない方法でアンモニアを合成するグリーンアンモニア合成反応の開発につながる大きな研究成果といえる。また、エネルギーキャリアとして期待されるアンモニアを高効率で合成する有用な触媒を開発しただけでなく、計算化学に基づいたアプローチによりさらなる高活性な触媒開発への展開が期待できる。
 本研究成果は、2023年4月17日に「Nature Synthesis」(オンライン速報版)で公開された。

ニュースリリース
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/52409/23_0418_01.pdf