2023年04月27日
東工大「農・工融合」で強靭なトウモロコシ開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京工業大学

 東京工業大学 環境・社会理工学院の友部遼助教をはじめ北海道大学、東京大学、京都大学などの共同研究グループは26日、弾性波を使うことで、飼料用トウモロコシの茎部ヤング率(変形しやすさ)を非破壊的かつ迅速に、高精度で計測する新技術の開発に成功したと発表した。さらに物理数値シミュレーションと、実試験により、この妥当性を確認した。

 研究グループは、地震工学に着想を得た超小型センサーアレイを開発し、物理数値シミュレーションと組み合わせることで、トウモロコシ品種の弾性係数のうち、ヤング率をハイスループット(HTS)に評価する手法を開発した。

 研究では、トウモロコシ地際部を軽く叩いて発生させた弾性波を、トウモロコシの茎に取り付けたセンサーアレイにより観測し、その波形を解析することで、0.1 秒以内に茎部のヤング率を計測した。さらに、トウモロコシ個体全体を揺らす振動試験と、有限要素法に基づく再現シミュレーションを組み合わせて検証し、得られたヤング率の妥当性を確認した。

 これまでの穀実作物の耐倒伏性系統の選抜では、材料試験機を用いた破壊的検査が行われてきた。この従来法では、ほ場から個体単位で茎葉部を刈り出し、茎部断片を作成し、新鮮なうちに曲げ試験により強度を求める必要があるため、トウモロコシの育種への適用は困難だった。

 今回研究の成果により、トウモロコシの茎の弾性係数を容易に推定することがが可能とり、今後、台風や豪雨に際しても倒れにくい飼料用トウモロコシ系統を迅速に選抜できる。またイネやコムギ、ダイズ等への応用も期待でき、わが国の食料安全保障の強靭化に貢献できると期待できる。

<用語の解説>
◆弾性波:弾性体内部および表面を伝搬する波であり、ここではトウモロコシの基部を打撃したことで発生し、組織内部を伝搬する波を指す。
◆ ヤング率:材料の弾性変形のしやすさを表す値であり、材料のかたさ/やわらかさを表す値の一つ。トウモロコシ茎部の変形しやすさを表す値となる。

ニュースリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/230426_pr.pdf