2023年05月08日
広島大「石炭灰」を利用してアサリの生態系回復
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:広島大学

 広島大学大学院 先進理工系科学研究科の日比野忠史准教授と中国電力の共同研究グループはこのほど、火力発電所から出る石炭灰を利用してアサリの生態系回復の実証試験を行い、個体数の増加や穀長の成長促進などの効果を確認したと発表した。
 
 両者は2019年 12 月に包括的研究協力を締結し「石炭灰利用・環境保全技術共同研究講座」を設置して、石炭火力発電所から排出される石炭灰の高度利用について尾道市松永湾で実証研究を行ってきた。

 その結果、石炭灰造粒物には次の2つの効果があることを確認した。
(1)干潟の一次生産能力の向上
 石炭灰造粒物の表面には微細な藻類が付着しやすく、栄養塩やミネラルの供給が期待できることから、アサリの餌環境を改善できる。
(2)食害防止
 ツメタガイやエイ等による食害防止に礫径材が有効であり、平均粒径が約 20mm である石炭灰造粒物により食害を物理的に防止できる。また、繁殖した藻類がCO2を吸収する(ブルーカーボン)効果もあったと考えられる。

 研究グループは2022年5月、これらの研究成果を含めた石炭灰造粒物による環境改善への取り組みが土木学会から評価され、環境賞を受賞している。