2023年05月24日
東北大、カルシウム蓄電池 繰り返し充放電に成功
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 東北大学 金属材料研究所の木須一彰助教とトヨタ北米先端研究所などの研究グループは23日、カルシウム蓄電池の長期繰り返し充放電に成功したと発表した。

 研究グループは、天然鉱物としても知られるコベライト(銅藍、硫化銅)に着目し、ナノ粒子化と炭素材料との複合化を行うことで、カルシウムイオンが大量に貯蔵可能な正極材料を開発した。さらに水素クラスターを含む電解液を用いることで、コベライト正極とカルシウム金属負極を組み合わせた電池を試作し、実用化の指標となる500回以上の繰り返し充放電を実現した。

 電気自動車やスマートグリッドなどの社会実装に向けて、資源が豊富で、蓄えられるエネルギー量が大きい次世代の蓄電池が求められている。カルシウムは地殻中に5番目に多く存在し、安価で入手しやすい元素。金属カルシウムを用いることで高いエネルギー密度も実現可能であるため、カルシウムイオンやその金属を用いたカルシウム蓄電池が注目されていた。だが、安定性や可逆性を有する電極材料や電解液が課題で、数十サイクル以上の繰り返し充放電可能な電池は、これまで報告されなかった。

 東北大の木須一彰助教らの研究グループは今回、天然鉱物のコベライトに着目し、ナノ粒子化と炭素材料を複合化することで、カルシウムイオンが大量に貯蔵可能な正極材料を開発した。さらに電池を試作し、実用化の指標となる500回以上の繰り返し充放電を成功させた。
 同成果は、2023年5月19日に国際学術誌「 Advanced Science 」にオンライン掲載された。
 
◆コベライト: 銅の硫化鉱物(硫化銅、CuS)であり、日本では銅藍とも呼ばれる。鉱物の発見者であるイタリア人 Nicolas Covelli に因んで英名が付けられた。
 
ニュースリリース
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20230523_02web_calcium.pdf