2023年09月15日
北大、極低温の氷表面で動き回る炭素原子観測
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学 低温科学研究所の渡部直樹教授らの研究グループは15日、極低温の氷表面における炭素原子の振る舞いを、独自の手法で観測することに初成功したと発表した。

 炭素は宇宙で4番目に存在量が多い元素。宇宙空間には数多くの種類の有機分子が存在しているが、こうした分子の起源は星が誕生する以前の宇宙の極低温空間にあると考えられている。多くの有機分子は炭素原子が複数個連なった炭素鎖を持っているが、炭素鎖がどのように成長したかは、これまで分かっていなかった。
 
 これまで、宇宙に浮遊する氷微粒子表面で鎖が成長する説が有力だったが、それを裏付ける証拠はなかった。また、最近の理論的研究では、炭素原子は氷表面に強く結びつき動けない事が予想されており、炭素鎖形成の起源は謎とされてきた。

 研究グループは、これまで実験的に観測が難しかった、極低温氷表面の炭素原子の動きを2種類のレーザーを用いた独自の手法で観測した。これにより、氷表面に強く結びつく炭素原子が存在する一方で、ある炭素原子はマイナス250 ℃を越えたところで活発に動き出し、炭素鎖を形成しはじめることを確認した。
 
 本研究は、水素などに比べ比較的重たく動きにくい炭素原子であっても、極低温氷表面で自由に動き回り、大きな有機分子の骨格を作りうることを初めて示したもので、宇宙に大量に存在する有機分子の起源に関する理解が格段に進展することが予想される。
同研究成果は、2023年9月15日公開の「Nature Astronomy」誌に掲載された。

◆氷微粒子 : 氷星間塵とも呼ばれ 0.0001mm 程度の直径を持つ微粒子。ケイ酸塩鉱物や炭素質物質を核とし、主に H2O からなる氷を纏っている。

ニュースリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/230915_pr.pdf