2023年11月15日
北大、免疫系があるのになぜ「がん」になるか
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学 遺伝子病制御研究所の和田はるか准教授らの研究グループは15日、免疫がある状態での「がん」の開始にはがん幹細胞によるマクロファージの老化がカギになるとの見解を発表した。がん幹細胞がマイクロファージを老化させて免疫系から逃れるメカニズムを発見した。

 免疫系をもつ動物に「がん」が発生するのはなぜか。近年、がん幹細胞を標的とした治療を行えば、理論上はがんの根治につながるとされ、「がん幹細胞」の決定が重要な課題となっていた。
 
 だが、免疫のある状態でもがんをつくる「がん幹細胞」についてはよく分からないままだった。そこで研究グループは、免疫のある状態でもがんを開始する「真のがん幹細胞」とはどのようながん細胞であるかを探究することにした。

 「がん幹細胞」と免疫のある状態ではがんをつくらない「非がん幹細胞」を比較解析したところ、がん幹細胞はIL-6(インターロイキン)を介してマイクロファージを細胞老化状態に誘導していることがわかった。細胞老化状態のマイクロファージは免疫抑制因子アルギナーゼを産生しており、腫瘍組織内のT細胞は活性化できない状態になっていた。
 
 このメカニズムにより、結果的にがん幹細胞は免疫のある状態においても免疫系からの監視を逃れ、がん組織の形成を可能にしていると考えられる。今後は、老化マクロファージを標的とした新しいメカニズムに基づくがん治療法の開発につながると期待できる。
同研究成果は11月14日付の「Journal for Immunotherapy of Cancer」誌に掲載された。

ニュースリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/231115_pr.pdf