2023年11月27日
北大、mRNA が短くなり動物が産まれる
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学理学部の小谷友也准教授らの研究グループは27日、慶應義塾大学医学部の山本雄広専任講師と共同で、成熟mRNAが短くなることを発見し、動物が産まれてくるための新たな仕組みを解明した。

 細胞の核で転写されたmRNAは、細胞質に運ばれる前に長さと配列が決定され、成熟mRNAとなる。成熟したmRNAは、長さを変えることはないと考えられてきた。また、動物の受精卵は発生を進めるためにmRNAからタンパク質を合成するが、その場所と時期は厳密にコントロールされる必要があると考えられている。
 
 研究グループは今回、動物の受精卵に蓄えられたmRNAがある時期に部分的に短くなることを発見した。具体的には、ゼブラフィッシュのmRNAとマウスのmRNAの末端の配列が、それぞれ約70塩基と約10塩基短くなることを見出した。
 
 次に、長いmRNAは翻訳を抑制されてタンパク質を合成しないこと、短縮されたmRNAは翻訳を活性化しタンパク質を合成することを示した。さらに、mRNAの短縮を阻害した胚では翻訳は活性化せず、その後、頭部から尾部までが極めて短い胚となり発生を停止することを明らかにした。網羅的な解析と抗体を用いた機能解析から、mRNAの短縮は結合するタンパク質を入れ替える分子スイッチとして働くことが示された。
 
 最後に、受精卵が持つmRNAの約5%に相当する568種類のmRNAでその長さの変化を解析し、40%以上のmRNAで短縮が起こることを示した。今回研究で、受精卵が発生を進行するための極めて重要な原理を見出すことに成功した。同研究成果は11月24日「Science Advances」誌に掲載された。

(詳細)
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/231127_pr.pdf