2024年01月26日
京大、新型コロナ 血管機能低下を再現
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

 京都大学医学部の長尾美紀教授らは25日、順天堂大学と共同で、三次元的な構造を持った気管支と血管の組織を再現できる生体模倣システム(MPS)を開発し、新型コロナウイルスへの感染によって放出されるインターフェロン分子が血管の構造に影響を与えることを見出したと発表した。

新型コロナウイルスの気管支への感染が血管の構造と機能を低下させることをチップ上で再現した。

 COVID-19では新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)がヒト呼吸器系臓器に感染することが知られているが、心臓や血管など呼吸器以外の臓器にも影響を与えさまざまな症状を引き起こしている。臓器それぞれへの感染やその機序を詳しく理解するためには、生体外でそれらを調べる方法が必要だが、複雑な反応を再現する方法は限られていた。特に、ウイルス感染により細胞から放出されるサイトカインが他の細胞に与える影響や、血管構造・機能への影響を調べることは困難だった。

 研究チームは今回、生体内の環境を再現するためにマイクロ流体デバイスを用いた生体模倣システムを活用し、ヒト気管支上皮細胞からなるオルガノイドと三次元的な血管網を共培養する技術を開発した。これにより、気管支上皮細胞あるいは血管網に選択的に新型コロナウイルスを感染させることが可能となった。
 
 その結果、ウイルスは気管支上皮細胞に感染するものの血管内皮細胞には感染しにくいこと、そして感染した気管支上皮細胞からのI型インターフェロンが血管構造を壊し、その機能を低下させることをつかんだ。
 これらの研究成果は1月9日に国際学術誌「Lab on a Chip」オンライン版に掲載された。
 
ニュースリリース参照
https://www.t.kyoto-u.ac.jp/ja/research/topics/20240124