2024年04月25日
北大、シベリア森林火災の影響、初解析
【カテゴリー】:環境/安全
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学 北極域研究センターの安成哲平准教授および東京大学、九州大学などの研究グループは25日、シベリア森林火災が気候、大気質、経済に与える影響についてシュミレーションしたと発表した。

 シベリア森林火災によって、大気エアロゾルが増加した場合、火災発生域から風下域にかけて広範囲な冷却効果をもたらし、規模次第で地域温暖化を抑制するような効果が見られる。また、それによる大気汚染への影響は、見積もりによっては、中国や日本など東アジアの国々では、PM2.5増加により年間約数万人規模の早期死亡数増加が推定される。これらの経済的損失は貨幣換算するとそれぞれ約数百億米ドルにも上ることが分かった。
 
 これは、シベリア森林火災の強度が弱かった2004年と比べ特に強かった2003年のさらに2倍の強度で起こった場合(極端現象想定)の推定値だ。また、現在の気候条件下では、シベリア森林火災による冷却効果が日本などの低緯度の国々に経済的利益を、ロシアなどの高緯度の国々には損失をもたらす可能性がある一方で、2030年の近未来の気候では、森林火災と温室効果ガスの影響が組み合わさり、低緯度では損失、高緯度では利益が生じる可能性が示唆された。このことは、シベリア森林火災の煙が、越境大気汚染として遠方にも及び、広い範囲で人々の健康と経済に深刻な影響を及ぼしうる可能性と、地球規模での対策が必要であることを意味している。

 本研究は、現在温暖化が進む中で、今後、森林火災から排出される大気汚染微粒子(エアロゾルやPM2.5)による気候・健康・経済への様々な影響について適応策を講じるための重要な基盤データとなる。同研究成果は4月24日公開の「Earth's Future」誌に掲載された。

ニュースリリース参照 
https://www.hokudai.ac.jp/news/2024/04/post-1440.html