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CHEMNET TOKYO

2025年04月07日
京大、慢性腎臓病/細胞治療効果、マウスで確認
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

 京都大学の長船健二教授(CIRA増殖分化機構研究部門)らの研究グループは、ヒトiPS細胞から作製した腎前駆細胞(ネフロン前駆細胞)を効率よく増やす培養方法を開発した。これによりiPS細胞から作製した腎前駆細胞(ネフロン前駆細胞)を慢性腎臓病モデルマウスに移植すると、腎機能の低下や線維化の進行が抑制されることが示された。

 慢性腎臓病は、有効な治療法が少なく、病状が進行し末期腎不全になると人工透析が必要となる。研究グループは、これまでにiPS細胞から腎臓の細胞のもととなる腎前駆細胞を作製し、慢性腎臓病に対する細胞移植治療の実現に必要な研究を続けてきた。だが、それには治療効果が期待できる品質の高いiPS細胞由来腎前駆細胞を大量に作製する技術が必要だった。また、慢性腎臓病の状態を再現できる実験動物もなかった。

 本研究では、iPS細胞由来腎前駆細胞を効率よく増やす培養方法の開発と移植に適した腎前駆細胞を純化できる細胞表面マーカーの同定、慢性腎臓病の症状を再現したモデルマウス(慢性腎臓病マウス)の作製、そして慢性腎臓病マウスへの細胞移植の効果を検証した。臨床レベルでの使用を想定した方法で作製したiPS細胞由来の腎前駆細胞を慢性腎臓病マウスに移植したところ、治療効果が認められた。これは、慢性腎臓病に対するiPS細胞由来腎前駆細胞を用いた治療の実現に向けた重要な研究成果と位置づけられる。

 今後、さらに研究を進めていくことで、慢性腎臓病に対する細胞療法の開発に加え、急性腎障害など細胞治療が困難な腎疾患にも役立つ新たな知見が得られる可能性がある。
 同研究成果は4月2日に、国際科学誌「Science Translational Medicine」にオンライン公開された。

<用語の解説>
◆腎前駆細胞(ネフロン前駆細胞):
 ヒトやマウスでは発生期の腎臓にのみ存在し、糸球体と尿細管に分化することによって腎臓の機能の最小単位であるネフロンをつくる前駆細胞のこと。
 
ニュースリリース参照
 https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/250403-030000.html





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