2025年06月19日
レゾナック、宇宙ステーションで半導体評価実験
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 レゾナックは19日、現在開発中の、宇宙線に起因する電子機器の誤動作(ソフトエラー)を低減する半導体封止材の評価実験について、今年秋をめどに国際宇宙ステーション(ISS)で開始すると発表した。

 実験は、米民間宇宙企業の Axiom Space*2に委託済みで、レゾナックは、今年4月、評価用半導体チップを搭載した動作評価装置を材料暴露実験装置(MISSE)に設置した。本装置は、2025年秋に打ち上げられ、ISS での評価が開始される予定。同封止材のソフトエラー低減効果が確認されれば、既存の宇宙向け半導体の性能向上や、地上で使われている半導体の宇宙向けへの適用などが期待できる。

 人工衛星の打ち上げは過去10年で約11倍に増加しており今後も拡大する見込み。人工衛星には、地球観測や通信など、大量のデータ処理を行うため半導体(プロセッサ)が搭載されているが、宇宙向けプロセッサは、安定性を重視し、地上で使われるプロセッサよりも演算能力が低い傾向がある。

 画像処理で着陸地点を自ら探索した小型月着陸実証機「SLIM」のように、人工衛星が自律的に判断できるようにする動きや、「スターリンク」のように、通信遅延最小化のために低軌道衛星間をリンクさせる取り組み、衛星上にデータセンター機能を付与するなどの流れがあり、プロセッサの演算能力向上へのニーズが高い。宇宙線に起因するソフトエラーは課題の一つとなる
 レゾナックは今回、宇宙線に含まれ、ソフトエラーを引き起す中性子を吸収する材料を配合した半導体封止材を試作した。地上での評価実験でソフトエラー率を約20%低減した。

 レゾナックはさらに評価研究を進めるため、この封止材を使用した半導体チップをISS へ輸送し、船内外の暴露装置( MISSE)を使ってソフトエラー低減効果を評価することにした。打ち上げや実験は、レゾナックの委託を受けて、Axiom Spaceが実施する。地上試験では再現できない宇宙空間の放射線スペクトルの影響を検証し、宇宙向け半導体材料に求められる特性を特定する。高性能な半導体材料開発に重要なデータの取得をめざす。

ニュースリリース
https://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1750301401.pdf