2000年06月23日
公取委見解/協和発酵と三菱化学の可塑剤事業統合について
「原料アルコールでも公正な取引き」の申し出
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:三菱化学、公正取引委員会

 公正取引委員会によると、1999年度に受理した「合併届け出」件数は151件と、前年度に比べ大幅減少したが、2000年4月に協和発酵工業と三菱化学両社が可塑剤事業を分離、統合して営業開始した「株式会社ジュイ・プラス」については、合併承認の理由や独禁法上の考え方を要旨次のように説明している。

[事業統合の概要]
 協和発酵工業、三菱化学両社が可塑剤事業を取り巻く厳しい環境に対応するため、事業全般にわたる抜本的な効率化・合理化を目的として、折半出資による共同出資会社を設立、営業権、製造設備を譲渡して事業統合するもの。

[独禁法上の考え方]
(1)一定の取引分野
 可塑剤は、主に塩化ビニル樹脂を柔かくする添加剤として、塩ビ成形品メーカーに出荷されている。原料である酸の種類によりフタル酸系、アジピン酸系、トリメリット酸系等の種類があり、フタル酸系のものが全販売数量の約8割を占めているが、それぞれの可塑剤は、加工性、耐寒性、耐揮発性等の特性に応じて使用されることから、可塑剤の種類別に一定の取引分野が成立するものと判断される。
(2)競争への影響
 本件事業統合によって設立される共同出資会社のフタル酸系可塑剤の販売数量シェアは30%程度、その順位は1位となる。また、当事会社は原料のアルコールも製造している。国内の可塑剤メーカーは、原料のアルコールを、輸入品はあるものの、主に両当事会社から購入していることから、本件共同出資会社の設立により、競争者である他の可塑剤メーカーのアルコール調達が阻害される場合には、可塑剤の製造販売分野における競争に大きな影響を及ぼすことになる。
 しかしながら以下の事情から、フタル酸系可塑剤市場における競争を実質的に制限することにはならないと判断した。
 
ア)本件共同出資会社のほかに販売シェアが約10%を超え、生産能力も大きい有 力な競争業者が複数存在する。

イ)可塑剤にはいわゆる使い慣れの問題はなく、ユーザーは比較的容易に購入先を変更できる。

ウ)輸入品も、国産品と大きな品質差がなく、国内市況によっては輸入数量が増加すると考えられる。

エ)当事会社から、可塑剤メーカーに対して原料アルコールを販売するに当たり、当事会社間に協調関係が生じることのないよう当事会社の販売活動の独自性を保持し、また、当事会社との出資関係の有無により可塑剤メーカーを不当に差別的に取り扱わない等、当事会社と可塑剤メーカー間の公正な取引を確保するための措置を講じる旨の申し出があった。