2002年02月04日
開発競争激化の「有機EL材料」
「高分子系が浮上」住化、ダウなど急ピッチ
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:NEC、出光興産、三洋電機、シャープ、昭和電工、新日鐵化学、住友化学、セイコーエプソン、ソニー、大日本印刷、チッソ、東芝、東北パイオニア、日産化学、パイオニア、三菱化学、東洋インキ

 フルカラーの有機EL(エレクトロニクス・ルミネッセンス)が液晶パネルに追いつき、追い越す時期が間近かにせまるなかで、有機ELの製法にも低分子系と高分子系の競合が激しさを増している。
 
 有機EL材料を使ったパネルはパソコンや携帯電話のディスプレー用として期待され、やがてテレビ受像機用にも採用されると見込まれている。技術やコストの競争力が液晶を上回るとの見通しがはっきりしてきたためだが、低分子系有機ELを追撃する高分子系有機ELの開発スピードが早まったことで、有機EL材料やデバイス、パネルメーカーなどの今後の動きが注目されている。
 
 低分子系有機EL材料やデバイスでディスプレーを製作しようとするメーカーではソニー、NEC、三洋電機(米イーストマン・コダックとの合弁)、大日本印刷などが名のりを上げている。
 
 三洋電機はことしの夏から携帯電話の表示パネルに採用する計画。同社によるとこのパネルは約6万5千色を表示する液晶パネルに比べ、約4倍の26万色を表示でき、見やすく、応答速度も100倍以上(動画に使える)速い。また、170度の視野角があり、薄型(2ミリ、液晶パネルは5~6ミリ)で、自発行するためバックライトが不要。このため消費電力(50mW以下で、液晶の120mW~200mWを大幅に下回る)も低い。価格は当面、やや高価になるものの量産化すれば安くなるという。
 
 有機ELを使った携帯電話は米モトローラ社が一昨年秋から発売し、EL材料を東北パイオニア(エリアカラーで)が提供している実績がある。
 わが国の有機EL材料(低分子系)メーカーとしては三菱化学、新日鐵化学、東洋インキ製造、出光興産、タイホー工業、バンドー化学、チッソ、保土谷化学、外国では独コビオン、米イーストマン・コダックなどが研究開発を進めている。
 
 高分子系有機ELディスプレーの生産を計画しているメーカーとしては東芝、セイコーエプソン、シャープ、独コビオンなどがある。EL材料としては住友化学、昭和電工、日産化学、米ダウケミカルなどが開発中である。
 
 高分子系有機EL材料メーカーのなかで技術開発が先行している住友化学では「カラーの原色である赤(R)と緑(G)の耐久性はすでに1万時間を超えたが、青(B)はまだ2,000時間ていど。年内に1万時間達成をめざしたい」とまだ解決すべき問題が残されていることを指摘しているものの「コストが低く大画面ディスプレーに向く」とメリットを強調する。

 住化が1981年から導電性高分子の研究に着手したが、計画の具体化に当って昨年来、英CDT(ケンブリッジ・ディスプレー・テクノロジー)社から高分子有機LED(らいと・エミッティング・ダイオード)パネル用ポリマー特許の許諾権をえた。高分子有機LEDパネルは有機ELパネルの一つ。
 
 低分子系有機ELとはバックライトが不要な点が同じであるが、インクジェットなどの印刷技術が使えることからプロセスが有利で、画面や基板の大型化に向いている。
 
 インクジェットの印刷技術は、発光層を色素化する際、マスク蒸着法(真空蒸着)により3原色をバッチ方式でのせる低分子系有機EL材料にたいし、高分子を溶液にとかして吹きつける方法。この際、マスク合わせの複雑な作業がなくなりコストが安くなる。そのうえELパネルの3要素(コダックの特許)である電子輸送層、発光層、正孔注入層のうち電子輸送層と発光層を一体化できるのもメリットである。
 
 高分子系、低分子系を問わず有機EL材料はフレキシビリティがありディスプレーパネルの基板にガラスばかりでなく、プラスチックも使える。ただ有機ELのパネル基板をプラスチックにした場合、水や空気に弱いという問題が残されており、その解決が求められている。(編集局・佐藤光翔)