化学産業の新年の取り組みと課題
企業体力、独自強化のとき

佐藤光翔


 2003年はどのような年になるのであろうか。化学産業の軸足をどこに置いて、先に進むのか。創造的な技術を開発する必要性はかねていわれてきたが、製品としてキャッチアップするには具体計画を固めなければならない。
 
 化学品は国際商品であるだけに世界市場で生き抜く「実力」が求められる。エチレンセンターを中心とする石油化学工業は再構築が叫ばれながら、タイミングを失った。中国などの追い上げが激しく、わが国にはすでに対抗する勢力が見当たらない。
 
 とはいっても、化学産業が世界市場から脱落したわけではない。技術力をベースにアジア、欧州、米国などでの現地生産に取り組む企業もふえている。各企業が独自の技術、経営力で事業を展開する時代といえるのではなかろうか。
 
 そこで化学産業のリーダーと目される数人の首脳から聞いた2003年の展望とポイントをまとめてみた。
 
<エチレンセンター2グループへ>
1.エチレンセンターの再編は新年の10月に経営を統合する三井化学と住友化学が一つのグループ。そして三菱化学と旭化成、出光石化などでつくられるであろうもう一つのグループ。

 この二つのグループが代表的な存在となって国際競争力の強化がはかられよう。日本は過当競争の体質から抜け出さなければ明日はない。
 
 中国ではすでにいくつかのエチレンセンターがあり、さらに計画を進めているセンターもある。代表的なのは広東省恵州市に2005年までに建設されるエチレン年産80万トンセンターで、英蘭シェル社と中国の合弁により計画が進められている。
 
 日本にも参加の要請がきている。しかし、住友、三井はシンガポールでのエチレンセンター増強を進めているし、三菱にも恵州市のエチレンセンターに参加する体力はいまのところない。誘導製品では参加計画もでようが、ちょっと先になろう。
 
<注目されるプロピレンシフト>
1.誘導製品について国内の動きをみると三井化学のプロピレン系へのシフトが注目される。ナフサ分解の工程でエチレンよりプロピレンを多くとりだし、ポリプロピレン、フェノールなどの量産化をはかり、コストダウンしようとするものである。在来の製品でも組み合わせを変えたり、新技術で競争力のある製品が産みだされる。

<農薬、医薬、電子材料が有望>
1.化学産業は新しいものをいつも考え、研究にチャレンジしている。石油化学では40年以上の歴史をもち、新しいものがでにくくなっている。農薬、医薬、電子材料などのほうが手っとり早い。

 ただし、化学産業は縁の下の力もちで、電子・通信や自動車の国際競争力を支えている。自動車産業はアセンブルが中心。60%は下請にやらせている。鉄や化学産業は自動車産業との価格競争で不利な立場にあるが、化学だけをみるといろいろなことができるため食いっぱぐれがない。
 
<新しい事業で雇用創出>
1.化学産業はいま産学官協同でバイオやナノチューブの研究開発に力を入れているが、これをもっと加速させる必要がある。リストラばかりでは国全体の経済が沈んで行く。新しい事業で雇用をふやすことが大切。ことしは企業それぞれが新製品の開発を含め、体力を強化するときだ。

 化学産業の存立となれば、業界として世界的に生き残ることにあるが、いうべくして実現の難しい問題。やはり独自の技術、製品の開発が重要である。能率の悪い会社は消えざるをえないだろう。
 
<中国偏重の再考を>
1.アジアの時代とよくいわれるが、米、欧での企業活動をもっとふやしていい。中国、中国へと加速度がましている。これで国内産業が空洞化するようなことがあってはならない。すでに中国からの輸入額が同国向け輸出を上回っている。わが国の化学企業としては世界市場での存立を目ざすことが課題である。<佐藤光翔>