SHARQの現状と今後の展開

サウディ石油化学 社長

佐々木 和男 氏

 K.SASAKI

 サウディ石油化学(SPDC)は1981年、サウジアラビアの豊富な資源を利用して一大石化事業を展開しようと、日サ合弁で設立された「SHARQ](シャルク)の日本側投資会社。日本政府もナショナルプロジェクトとして支援してきた。
 1987年には第1期工事が完了して営業運転を開始、いらい93年には第2期、そして今は2000年夏の完成を目ざして第3期増設計画に取り組んでいる。
「これまで順調に拡大してきた。サウジ品に対する市場の評価が高まったことが大きい」と佐々木社長。国際的に設備過剰感が広がりつつあるときだけに、今後どのように販売戦略を展開しようとしているのか注目される。

━工場はいまどんな状態ですか。

 1994年に第2期工事が完了し、翌95年から商業生産を開始したが、EG(エチレングリコール)、PE(低密度ポリエチレン)とも順調な操業に入っている。立ち上がりのトラブルもなく、運転は非常にスムースだった。マーケットも気持よく受け入れてくれた。それこそ乾いた砂に水が滲み込むように、すうーと入っていったという感じだった。

━生産、販売とも順調というのは、どこに原因があったのですか。

 PEは『カマール』の商品名で販売しているが、品質に対するマーケットの評価が高い。供給も安定している。このため中国を含む東南アジアをはじめ欧州など各地で買ってもらっている。他のPEより高いプレミアムつきで買ってくれているところもある。バックアップしてくれた三菱化学の技術支援がよかったこともあるが、これを吸収し、サービスをしっかりやってきたサウジ人たちの努力も大きい。
 EGでは最高レベルの品質であるのに加え、専用船を駆使した安定供給によりお客さんの安心感を勝ち得ている。

━技術面でのトラブルがないというのは、今後の自信にもつながりますね。

 その通りだ。サウジのプロジェクトというと、素材・汎用の量産型製品だけというイメージがつよいようだが、現地ではよく技術を使いこなし、キャッチアップしている。日本の石化業界には生産棲み分けという考え方があるが、これからはどうかな。サウジもダウンストリームをやる力をつけつつあるといっていいと思う。

━SPDCの経営陣としても認識が変わってきたのでは。

 そうともいえる。15年やってきた実績や経験がわれわれの認識を変えたということだと思う。サウジという国自体異文化の国で、どうもとっつきにくいという印象をもたれがちだが一緒に仕事してみるとそんなことは全然感じない。感じてはならないという方が正確な表現といえよう。
 国自体は財政の80%以上を石油に依存しているから、石油価格の変動によって財政事情が変わるという厳しい情況にいつも置かれている。
 しかし、今の王族をはじめ政治の実権をにぎっている人たちは皆よく勉強している。非常に向学心がつよく、世界の先進国に追いつけ追い越せと、技術にしてもマーケティングにしてもどんどん吸収しようとしている。彼らは世界の動きをよくみているし、調和も考え始めている。日本もアドバイスしながらやっていけば、パートナーとして不足のない相手になりつつあると思う。

━現地では第3期工事がはじまっています。

 工事は順調だ。2000年7月にはEG45万トンの新設備が完成する。これで3系列合わせて年産135万トンと、単一工場では世界最大になる。PEは今の45万トンをデボトルによって75万トンに増強中だが、5月には完了の予定だ。そこで引取量だが、EGは135万トンのうち半分の675,000トンがペトロケミヤの持ち分、残りの半分がSHARQのオウンプラントで、それをSABIC60%、SPDC40%の比率で分けることになっている。従ってわれわれの引取量は27万トンとなる。
 またPEは75万トンの40%、30万トンがSPDCの引取量になる。

━SPDCとしては、これからどう売っていくと。

 いや、もうどちらもほぼ販売のめどはついている。PEは日本もあるが、中心は中国、アジア、欧州の各地でということとなる。さっきも言ったようにマーケットで十分評価されている。みんなキャパが出てくるのを待っている状態だ。
EGも中国、アジアを中心にほぼめどはついている。私たちの売り方、パフォーマンスにユーザーたちは満足してくれている。

━コスト競争力には自信がありそうですね。

 競争力は圧倒的にある。他のメーカーがどんなに安い値段で出してもフォローできるだけの力はもっている。原料の中核はエタンだが、その価格一つとってみても、トン当たり37ドル。しかもずっとフラットで、この値段は変わらない。これだけみてもいかに競争力があるか、おわかりいただけると思う。しかし、だからといって、例えば日本市場をにらんで量を拡大していこうと考えているかというと、そんなことはない。日本に出て行かなくても、もっと近いところに市場はあるし吸収力もある。日本への輸出は、ロジスティックが高いし、SHARQ社の手取りはあまりよくない。「FOR THE SHARQ」で考えると、日本へ持ってくることは必ずしも良策ではない。が、当社がナショプロとして発足した経緯からして、日本市場に一定のプレゼンスを維持していく積りではある。