2023年08月29日
ダイセル、合成可能な高分子を自動生成 新開発
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 ダイセルと統計数理研究所(東京都立川市、統数研)は29日、高分子合成に用いられる重合反応のルールを実装した仮想高分子生成モデル「SMiPoly」を開発し、オープンソースソフトウェア(OSS)として公開したと発表した。
 
 このモデルに市販化合物を入力することで、原理的に合成可能な高分子を生成できる。SMiPoly と機械学習・人工知能の技術を組み合わせることで、新材料探索の上で大きな壁となっていた合成実験のデザインに要する時間と労力を大幅削減できる。

■研究の背景と概要
 現代社会は、地球温暖化をはじめ環境問題やエネルギー資源問題など、多くの課題に直面しており、豊かな次世代社会を構築していくためには、これまでにない物性・機能を有する新材料の開発が不可欠とされ、データサイエンスや人工知能を取り入れた、マテリアルズインフォマティクス( MI )という新学際領域に注目が集まっている。

 ダイセルと統数研は今回、高分子合成で広く用いられている 22 種類の重合反応ルールを実装した仮想高分子生成モデルSMiPoly を開発した。このモデルに市販の原料モノマーを入力することで、反応様式が自動的に選ばれ、計算機内での化学反応を介して高分子が重合できる。

 今回の研究で、市販されている約 1,000 種類の原料を用いて、約 17 万個の仮想高分子を生成した。現在の合成高分子の大部分をカバーし、なお多様な新規高分子を含んでいる。
 
 今後はSMiPoly と機械学習・人工知能技術を組み合わせることで、MI による新材料創製に要する時間的コストを大幅に削減する。また、統数研は、産学連携コンソーシアムを形成し、RadonPy という高分子物性自動計算システムを用いて、大量の仮想高分子群を包含する高分子物性オープンデータベースを開発していく方針だ。
 同成果は科学誌「Journal of Chemical Information and Modeling」電子版(8月22日付)に公開された。
 
ニュースリリース
https://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1693283801.pdf